健康寿命と口腔内汚染について
- 2024年7月6日
- お知らせ
健康寿命と口腔内汚染について
こんにちは!今回はセントティースデンタルクリニックで勤務しています 歯科医師 藤 大補です。
今回は、私が11年間専門としてきました口腔外科で病院勤務中特に重要だと思った健康寿命と口腔内汚染について話します。
まず健康寿命についてです。
健康寿命とは、日常生活に支障なく健康的に過ごせる寿命のことを指します。日本において、平均寿命は世界でも長い水準にありますが、健康寿命との間にはギャップがあります。このギャップを縮め、健康寿命を延ばすことは、高齢化社会における重要な課題となっています。健康寿命を伸ばすには、全身の健康維持が不可欠であり、その中でも口腔内の健康は重要な役割を果たします。(フレイル等との関連もありますが、この度は割愛します)
口腔内汚染について
口腔内汚染とは、口の中の細菌の過剰な増殖や歯垢(プラーク)の蓄積、歯周病や虫歯が進行した状態を指します。これらは主に歯を磨かない(磨けないも含む)や不良な生活習慣によって引き起こされます。口腔内汚染が進行すると、単に口腔内の問題にとどまらず、全身の健康にも悪影響を及ぼすことが明らかになっています。
口腔内汚染と全身の健康への影響について
口腔内汚染は、全身の健康にさまざまな影響を与えます。以下にその例を列挙していきます。
- 誤嚥性肺炎 口腔内の細菌が唾液と共に誤って気道に入ることで、誤嚥性肺炎を引き起こします。特に高齢者や嚥下機能が低下している人々に多く見られ、重篤な合併症となり得ます。口腔内が汚染されている状態ではよりリスクが高くなります。
- 心血管疾患 歯周病が進行すると、歯周病菌が血流に入り、全身に拡散されます。これらが動脈硬化を促進し、心筋梗塞や脳卒中のリスクを高めるといわれています。
- 糖尿病 歯周病等の慢性炎症はインスリン抵抗性を引き起こし、糖尿病の治療の妨げになります。そして糖尿病による合併症である口腔乾燥や血流障害は歯周病のリスクを高め、両者は相互に悪影響を与え合います。
以上のことから口腔内汚染が全身の健康に影響している部分を感じ取っていただけたと思います。
故に口腔内環境を清潔な状態に保つ必要があると共に、悪い状態を放置せずに治療出来る時に治療する必要があります。
次は口腔において健康寿命を延ばすためについてですが、以下の行動が重要となってきます。
- 定期的な口腔ケア 毎日の歯磨きやフロッシングを徹底し、歯垢の蓄積を防ぎます。特に歯間部や歯と歯肉の境目は重点的に清掃します。また、デンタルリンスを使用して細菌を減少させることも有効です。
- 歯科検診とプロフェッショナルケア 定期的な歯科検診を受けることで、虫歯や歯周病の早期発見・治療が可能になります。歯科衛生士による専門的口腔ケアも、口腔内の衛生を保つために重要です。
- 適切な食生活 バランスの取れた食事を心がけ、特にビタミンやミネラルを豊富に含む食品を摂取することが、口腔内の健康に寄与します。糖分の多い食品や飲料は虫歯の原因となるため、摂取を控えるようにします。糖尿病等の生活習慣予防の為にも必要です。
- 禁煙と飲酒の制限 喫煙は歯周病のリスクを大幅に高め、治癒を遅らせるため、禁煙が推奨されます。また、過度の飲酒も歯肉炎や酸蝕等口腔内の健康に悪影響を及ぼす可能性がある為、適度な飲酒を心がけます。
- 唾液分泌の促進 唾液は口腔内の自浄作用を持ち、細菌の増殖を抑制します。十分な水分摂取やガムを噛む等して唾液の流出促進を促すことは重要です。
- 入れ歯の適切な管理 入れ歯を使用している場合は、毎日適切に清掃し、定期的に歯科医で調整を受けることが重要です。入れ歯の不適合は口の中の衛生状態を悪化させ、口内炎や口腔内感染症の原因となります。
また現在高齢化社会が叫ばれて久しいご時世であり、またご高齢になられると免疫力が低下する為健康寿命に対する口腔ケアはますます重要です。歯科的特徴としては加齢に伴い、唾液分泌の減少や嚥下機能の低下、歯の喪失などが進行しやすくなります。よって以下に示す対応が必要です。
- 口腔リハビリテーション 嚥下機能の低下を防ぐために、口腔リハビリテーションを行います。嚥下訓練や口腔体操を取り入れることで、嚥下機能の維持・改善が図れます。その為にはしっかりと咬合が出来る状態を構築することが必要です。
- 介護者の支援 自力での口腔ケアが難しい高齢者には、訪問診療等にて衛生士による口腔ケア介入が必要です。それにより誤嚥性肺炎の発生等を予防することが出来ます。
- 定期的な歯科受診 定期的な歯科受診を継続し、専門的な口腔ケアを受けることで、口腔内の健康を保ちます。
最後にまとめを記載し、このコラムを終えたいと思います。
私自身 この先ご高齢の方や全身状態が悪い方が増え、口腔内汚染が進行していても見て見ぬフリをするのではなく、最後まで口腔内保清が保たれ、天寿を全う出来る そんな世の中を作っていきたいと思います。
まとめ
口腔内汚染は、口腔内の疾患を引き起こすだけでなく、全身の健康に影響を与える要因となります。特に、誤嚥性肺炎や心血管疾患、糖尿病等のリスクを高めるため、口腔内の健康維持は健康寿命の延長に寄与します。日常的な口腔ケアの徹底、定期的な歯科受診、バランスの取れた食生活、禁煙と飲酒の制限、そして唾液分泌の促進などの取り組みが、口腔の健康を維持し、健康寿命を伸ばします。口腔内の健康を保つことが、健康寿命の延長に寄与すると考え日々の生活に取り入れていくことが大切です。
セントティースデンタルクリニック
勤務医 藤 大補
兵庫県の小学校、中・高校を卒業
2013年 福岡歯科大学歯学部卒業
2014年 神戸大学医学部附属病院歯科・口腔外科研修修了
2014年~2023年 神戸大学歯科・口腔外科関連病院 勤務
2024年 セントティースデンタルクリニック勤務 現在に至る
https://st-teeth.com
〒596-0825 大阪府岸和田市土生町2丁目29番3号 STELLA BLDG 2F